彩度beige
(・・・嬉しい・・・、すごく嬉しいけれど・・・)


もし、ここで私が「うん」と返事をしたならば。

それはもう、私と彼が、ここからまた距離を縮めていく合図になってしまうと思った。


(・・・それはダメだ・・・)


できるなら、私だって一緒にいたいと思うけど。

さっき、「今だけは」って、「今日だけは」って、決めたばかりではないか。

「・・・、あくまでもオレの希望だし、すぐに答えなくても平気だよ。頭の片隅に入れといてくれると嬉しいけど」

言葉が出ない私に向けて、一葉くんはそう言って優しく笑う。

ーーーずきり、と胸が痛む音がする。

本当は、そんな顔をさせたくないのに。

私だって、本当はーーー・・・。

「・・・とりあえず、熱いうちに料理食べようか。折角用意してもらったし」

「あっ・・・、う、うん!」

一葉くんの声かけに、私は頷き、ナイフとフォークを手に取った。

ーーー今・・・、お願い今日だけは。

先のことは考えず、今を十分味わおう。

一か月先、一葉くんの誕生日。

もし、一緒に過ごせたら。もし、2人で一緒にいられたら。

そんな夢のような一日を、私は、頭の中に思い描いた。

ーーーけれど。

私はそれを、ゆっくりと、真っ白な絵の具で見えないように消していく。


明日になったら断ろう。


もう、これ以上、一葉くんを好きにならないように。

彼からも、距離を取ってもらえるように。

これで嫌われたとしても、それが正解なのだと思う。








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