彩度beige
(あの時は、楽しかったし嬉しかったな・・・)


贈ってくれたものたちは、今も大切な宝物。

そしてこのイヤリングは、その延長線上のものだと思った。

「・・・わざわざ作家さんに頼んでくれたの・・・?」

確認のように私は尋ねる。

忙しい中、私に似合うものになるように、作家さんとやり取りをして・・・。

「ああ、うん。聞いたらオーダーもやってるって聞いたから。水谷さんのイメージを伝えてお願いしたんだ」

「・・・・・・」

とてもかわいらしいけれど、小ぶりなこともあり、今の私でも気負わずにつけることができそうだった。

一葉くんは本当に、どこまでも私のことをわかっている気がしてしまう。

「・・・、ありがとう・・・」

もう、泣いてしまいそうだった。

嬉しくて、嬉しくて。

プレゼントも、気持ちも、私のために彼がしてくれたこと全部。

全てがとても嬉しくて、たまらない気持ちになっていく。

「どういたしまして・・・って、ごめん、また長くなったな。じゃあ・・・、また明日の朝に」

今度こそ、という雰囲気で、一葉くんは部屋から立ち去ろうとした。

「おやすみ」と言った彼に、私は思わず「待って!」と声をかけてしまった。

「え・・・?」

「あっ・・・、えっと・・・・・・」

呼び止めてしまったものの、何を言ったらいいだろう。

一葉くんも、今日は絶対疲れてる。

これ以上、余計な時間を使わせるわけにはいかない。

そんなふうに思うのに、だけど、まだ一緒にいたい。

「・・・どうした?」

「あ・・・・・・、うん、えっと・・・・・・、この部屋、すごく広いでしょ?本当にすごく広いから。一葉くんが帰ったら、ちょっと広すぎるかなと思って」

まだ、帰ってほしくない。

そんな気持ちを素直に伝えられなくて。

冗談っぽく、遠回りすぎる言葉を告げる。

「ああ・・・、うん、そうだよな。それは少し考えた。水谷さん一人なら、他の部屋にするべきかって」

「・・・うん」

「けど、ここが一番景色がいいし、水谷さんの好みに合うと思って選んだんだ。とはいえ・・・、確かにまあ、やっぱ広いか」

苦笑して、一葉くんが部屋をぐるりと見渡した。窓から見える夜の色彩が、彼の背景になって馴染んでく。

綺麗なラインを描いた横顔。見惚れつつ、私はコクリと頷いた。

「この部屋をひとり占めできるのは、贅沢で、本当にすごく嬉しいの。でも・・・、やっぱり、一葉くんが帰って一人になったら、夜は寂しくなるかなあって」

相変わらず、少し冗談交じりに。だけど全部私の本音。

だから。

もう少しだけ、ここに居てはくれないだろうか。

あと10分。ううん、5分でいいからーーー・・・。

「・・・それなら」

一葉くんが考えるように呟いて、私に一歩、近づいた。

10cmもない距離で。彼は、私を見下ろし真っ直ぐ見つめた。

「このままここに、オレも一緒に泊まろうか」

「・・・え・・・?」

一瞬、意味がわからなかった。

聞き返すように、何度か瞬きをして私は彼を見つめ返した。
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