彩度beige
「幸いベッドも2個あるし。隣で寝れば、水谷さんも寂しくないでしょ」

「っ、そ、それは・・・・・・、確かにそう・・・だと思うけど・・・」

頬が熱い。

こういう流れになるとは思っていなくって、私は焦り、どんどん声が小さくなった。

一葉くん、本気で言っている?

・・・でも・・・、「寂しい」なんて言われたら、それこそ、そうしてほしいと望んでいると思うのが、普通の反応かもしれない。


(・・・どうしよう。私、結構大胆なことを言ったかも。・・・もちろん・・・、泊まってくれたら嬉しいけれど・・・)


だって、そうしたら、一晩中一緒に居られる。

あと5分や10分のことではなくて、もっとずっと一緒に居られる。

だけど・・・、別々のベッドだとはいえ、同じ部屋、隣同士であるわけで。

そうなると、何も起こらない保証はない気もするわけで・・・・・・。

「・・・冗談だよ」

焦りつつ、返事を悩む私の耳に、一葉くんのふっと笑う声がした。

見上げると、目が合った彼は微笑んで、「ごめん」と小さく呟いた。

「泊まるって言ったらどうするかなって、水谷さんの反応を見たかっただけ。・・・なんて、これはさすがに意地悪だったか」

「・・・・・・」

ーーー違う。

そんなこと。

そんなこと思うわけがない。

だって、ほんの一瞬だけど、いたずらっぽく笑う彼の、切なそうな顔が見えたから。

「寂しくなったら、フロントに電話くれればいいよ。女性スタッフに部屋に行くよう頼んでおくから」

「・・・っ、・・・」

「・・・じゃあ、ゆっくり休んで」

「おやすみ」と優しく微笑むと、一葉くんはすぐにドアの方へと歩き出す。

そしてそのまま、部屋の外へと行ってしまった。

「・・・、あ・・・・・・」

パタン、と、静かにドアが閉まる音。

部屋中が、やけに無機質になった感覚がした。

「・・・・・・」


(・・・・・・、やっぱり、すごく寂しいよ・・・・・・)


一葉くんが、ここからいなくなってしまっただけで。

こんなにも私は寂しくて、「泊まって」って、「このまま一緒にいてほしい」って、言えなかったことを後悔してしまう。

ーーーだけど、もし、数分前に戻れても。私はきっと、そんな言葉は言えなかったと思う。

過去の経験。未来の行方。

これまで何度も考えて、悩んで、導き出した自分なりの答え。

それを変えられるほどの違う答えを、私は、見つけられてはいないから。





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