彩度beige
(一葉くんにパジャマ姿で会う訳にはいかないもんね)


朝からスーツ姿だなんて、ちょっと堅苦しいけれど。

今は他に着る服がないので仕方ない。

一通りの準備を終えると、一葉くんに連絡をした。するとすぐ、5分後に行くとの返事があった。


(・・・大丈夫。落ち着こう)


そばにあった鏡を前に、自分自身に言い聞かせる。

一葉くんが部屋に来て、洋服を受け取ったら彼の誕生日の件を断ろう。

感じが悪くなったっていい。

・・・むしろ、その方がいいかもしれない。

嫌われたなら、私だって諦めがつく。一葉くんだって、私を選ばなくてよかったって、そう思ってくれるはず。

・・・うん。少しそっけないくらいがいいかもしれない。

嫌われたら今はどうやったって傷つくけれど、何年後かには、夢のような時間だったと、いい思い出になってくれるはずーーー・・・。

その時、ドアの方からリーンとベルの音がした。

一葉くんだ。

私は息を整えて、もう一度鏡の中の自分に気合いを入れた。そして入り口の方へと向かっていって、ドアを開いた。

「おはよう」

「っ、おはよう・・・」

目の前に立っているのは、いつもと同じ彼だった。

かっこよくて、キラキラしてて、私に優しく笑いかけてくれる。

やっぱり好き、という想いが湧いて、胸がぎゅっと苦しくなった。

けれど私は感じた想いをなかったことにするように、彼からすっと目を逸らす。

「・・・夜は眠れた?」

「うん」

彼の言葉に、私は頷いて軽く笑顔を返す。

今はもう、沢山の言葉は話さない方がいいと思った。

「・・・そっか。・・・ああ、これ、昨日話してた服なんだ」

一葉くんが、赤いリボンのかかった箱を掲げてみせた。

智津さんらしいラッピング。私はコクリと頷いた。

「朝から大変だとは思うけど、一度着てみてくれるかな。サイズが合わなかったら調整をお願いしなくちゃいけないし。オレも一応確認したいし」

「・・・うん、わかった」

少しだけ悩んだけれど、私は頷き、その間、彼にはリビングで待っていてもらうことにした。

私は寝室へ移動して、赤いリボンを解いて箱を開け、きれいに折り畳まれた洋服をゆっくり取り出した。

「わ・・・」


(・・・かわいい・・・!)


柔らかな、淡いベージュの服だった。

キャミソールドレスのようなワンピース。素材は綿で、所々に入っている切り替えラインやギャザーがおしゃれでとてもかわいい。

ぱっと見はドレッシーに見えるけど、素材が綿であるためか、どこかカジュアルな印象もある。


(素敵・・・)


箱の中、ワンピースの下にはダークグレーのカーディガンも入っていた。

ワンピースだけだと肌の露出が多いので、外を歩くには結構勇気がいるけれど、このカーディガンを羽織ればだいぶ着やすくなるかもしれない。


(とはいえ、私にはかわいすぎる気もするけれど・・・)


似合うかな、大丈夫かな、と、ちょっと不安になりながら、まずは・・・と、ワンピースに袖を通していく。
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