彩度beige
「衣緒」

最後に・・・という雰囲気で、敦也は小声で私に話しかけてきた。

ビクッと、私の身体が小さく震える。

「もしかしてまたセレブ狙い?もう関係ないけどさ、俺に恥をかかすなよ」

「・・・っ!」


(・・・な、なにそれ・・・・・・っ!?)


あまりのショックで、全く言葉が出なかった。

敦也は、何事もなかったように松澤さんたちに「じゃあ」と笑顔で頭を下げると、美波さんを連れて立ち去った。


(『俺に恥をかかすな』って・・・、じゃあ、わざわざ話しかけてこなきゃいいのに・・・っ!)


そうしたら、私と敦也の関係なんて、ここにいる人たちは誰も知らなかったはずなのに。

なのにーーー・・・。

それに、「またセレブ狙い」っていう台詞。

敦也のことも、セレブだから狙って付き合っていたと思ってたんだ・・・。

「・・・・・・」

悔しくて、悲しくて、涙が出そうになってくる。

半個室内の微妙な空気は、敦也が去っても変わらなかった。

「え、えーと・・・・・・、まあ、この年になるとみんな色々あるからなあ」

「そ・・・、そうですよね!」

「そう、そうそう」

松澤さんと真美の2人が、戸惑いつつも場を明るくしようとしてくれていた。

「よしっ!仕切り直して乾杯しよう!」「そうしましょう!!」と、2人で盛り上げようとしてくれたけど、私はもう、ここにいるのは限界だった。

「・・・ごめんなさい。私、酔ったのかちょっと気分が悪くなってきて・・・、申し訳ないけど失礼します」

「い、衣緒・・・!」

席を立ち、私はすぐにカバンを持って部屋を出た。

心配そうな真美の声が聞こえたけれど、私は振り返ることはできなかった。

だってもう、すでに涙が流れていたから。

こんな顔、誰にも見せるわけにはいかない。














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