彩度beige
(・・・サイアクだ・・・)


こんなところで敦也に会ってしまうだなんて。

二度と会いたくなんてなかったのに・・・。

「え?お知り合い?」

松澤さんが、私と敦也を交互に見やる。

敦也は「あー・・・」と苦笑い。

「まあ、ていうか、元嫁です。こんなところで会うとはびっくりしましたが・・・」

「ええっ!?」

松澤さんは驚いていた。

気まずくって、恥ずかしくって見れないけれど、きっと、他のみんなもびっくりしていることだろう。

「え、元奥さん?」

敦也の後ろの方からは、かわいらしい女性の声がした。

私はほぼ反射的に、その方向を見てしまう。

「・・・!」

そこにいたのは、美笠美波(みかさみなみ)、という名前の美容系のインフルエンサー。

敦也の今の・・・、ううん、多分、私と結婚していた時から付き合っていた恋人だ。


(SNSでは何度も目にしていたけれど・・・、実物は、写真よりも綺麗でかわいい・・・)


「え!?美波ちゃん?」

「えー!!かわいい!!」

里奈ちゃんと明日咲ちゃんは、美波さんのことを知っているのだろう、小さな声で騒いでいる。

美波さんが、応えるようにニコリと笑う。


(笑うとますます綺麗でかわいい・・・。おまけに、『セレブ』って感じのオーラがすごい・・・)


自分とはまるで正反対。

私はもう、自分がいたたまれない気持ちになった。

「わ、わー・・・、そうなんですね。そっか、すごい偶然だなあ」

半個室内の微妙な空気。

松澤さんは、この事態に戸惑いつつも、私の様子を気にかけて、丸く収めようとしてくれていた。

「ええっと・・・、秋田さん、とりあえず今日はプライベートなんで・・・。また仕事の席で、よろしくお願いします」

「あっ、そうですよね。ではまた、どうぞよろしくお願いします」

そう言って、敦也は笑顔で頭を下げた。

そしてそのまま、立ち去ろうとしたけれど。
< 14 / 101 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop