彩度beige
(・・・あー・・・、もう、ほんとに今日は最悪だ・・・)


レストランを抜け出した後、私は、夜の街をとぼとぼと一人で歩いていた。

まさか、あそこで敦也に会ってしまうだなんて。

とはいえ、経営者同士は結構繋がりがあったりするし、敦也は色々なパーティに行くのが好きで知り合い多いし、松澤さんも顔が広そうだったから、あの場で会うのは意外とおかしくはないことかもしれない。

でも・・・、美波さんとも会うなんて。

実物は、本当に綺麗でかわいい子だったな。

芸能人みたいなオーラがあって、ハイブランドであろう服もバッグもよく似合ってて。

まさに、敦也が求める女性だろうし、敦也の隣が似合うひと・・・。

「・・・・・・」


(・・・って、ダメだダメだ、もうやめよう!!思い出すと、また泣きそうになってくる・・・)


三十路の女が、夜の街で泣きながら歩いているとか結構やばい。

私は、こぼれそうになる涙をぐっとこらえた。

ーーーその時。

「・・・っ、待ってください」

後ろから、突然腕をつかまれた。

驚いて後ろを振り向くと、さっきの飲み会で真美の前に座っていた・・・、小説家だと言っていた、銀髪の男性が息を切らして立っていた。

「・・・え?・・・えっ、と・・・・・・?」

確か、名前は一葉さん。

ーーーなぜ彼が、この場所に。

そしてなぜ、私は腕を掴まれているのだろうか。

状況が全くわからずに、私は、ポカンとなって彼を見上げた。

「駅の方に行ったと思ったらいなかったから・・・。探しました」

「え・・・?」

私のことを探してた?

驚いて彼を見上げると、じぃっと、真っ直ぐに見下ろす瞳と目が合った。

少し茶色がかった切れ長の目。

間近で見ると、本当に綺麗な顔だと思った。

ドキリとする。

私は、心の中でアタフタしながら、それを必死に隠して彼に言う。

「・・・あ、あの・・・・・・、レストランには、もう戻りませんけれど・・・」

「ああ、うん。それはわかってるけど・・・、オレが、あなたと話したかったから」

「・・・っ、えっ・・・!?」


(私と・・・!?)


こんな綺麗な男性に、腕を掴まれたまま、「探してた」「話したい」と言われて動揺せずにいられるだろうか。

・・・どうやら私は無理みたい。

明らかに動揺してしまう。

「は、話したいって・・・」

これは・・・、何かの間違いか、男性が仕掛けるハニートラップかもしれない。

だってあの場には、里奈ちゃんや明日咲ちゃん・・・、私より若くてかわいい子が2人もいたし、真美だって、かなりの美人の部類に入る。

それなのに・・・、あんな場面を目撃された私をわざわざ探しに来るなんて・・・。
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