彩度beige
「性格は全然違うし、経済力って言っても、起業した敦也と、お祖父さんの代から続く一葉くんのお家は全然違うと思う。だけど私は、本当に普通の家庭で育った人間だから、ある程度以上の経済力がある人たちは、もう、それだけで一括りに感じてしまう部分があって。・・・私・・・、敦也とうまくいかなかったから、一葉くんとも・・・って、どうしても思ってしまって」

「・・・・・・」

一葉くんは、私の話を静かに聞いてくれている。

こんなことを言ってしまって、私は、本当に嫌われてしまうかもしれない。

「元夫とも、最初はうまくいってたの。私の普通っぽいところがいいって言ってくれたりもして。でも・・・、やっぱりダメだった。やっぱり、最初はよくても、いつまでも普通じゃダメみたいなの。それで、自分なりに頑張ってはみたんだけれど・・・、こういうのって、多分、生まれながらにどうしようもないっていうか、シンデレラみたいな要素がないと、どんなにお金をかけてもらっても、変われないままなんだってわかった。私は・・・、シンデレラの要素を持っていないから、普通っていうポジションからは、これからもずっと抜けることができないんだと思う。そうすると、やっぱり一葉くんには似合わない。きっと、ご両親や親戚もがっかりさせてしまうと思う。・・・だから・・・」

結論を口にする前に、一葉くんは私を抱きしめた。

愛おしそうに。さっきとは、違う感覚で。

「・・・そうやって、色々考えてくれてたんだ」

「えっ・・・?」

「オレとのことを、そうやって、沢山考えてくれてたんでしょ?」

「・・・っ」

そんなふうに、言ってもらえるとは思わなかった。

彼の手が、包み込むように私の髪に触れていく。

「そんな気持ちにさせててごめん。そんなふうに水谷さんが考えたのは、オレが頼りないせいだと思う」

「!、そんなこと・・・!」

「けど、今の時点で言えるのは、水谷さんが、シンデレラになる必要なんてないってことだ。・・・オレは王子様ではないし、水谷さんは今のままですごく魅力があるし、なにかになるとか変わるとか、そんな必要は全くないって思ってるから」

「・・・っ」

「・・・もちろん、シンデレラになれないって言いたいわけじゃない。そうじゃなくて・・・、水谷さんはオレにとって特別で、普通だとか違うとか、変わるとか変わらないとか・・・そういう次元の存在ではないっていうか。とにかく、今もこれからも、オレにとって水谷さんは、ただ・・・、ただ特別なんだ」

ーーーただ、特別。

それ以上でもそれ以下でもない。他の言葉で言い表せない。ただただ、一葉くんにとって私は特別・・・。

言葉の意味を噛みしめて、胸の奥が震えてく。

今、私に生まれた感情が、一葉くんにはわかるだろうか。

これまでも、ずっと言ってくれていた。その「特別」が、私の中で、違う意味を持っていく。

「・・・それに、親とか親戚のことなら何も心配しなくていいよ。多分みんな、水谷さんのこと好きだと思うし」

「・・・え・・・?」
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