彩度beige
「まあとにかくね、こちら側は水谷さんと会う前から『玲央くんに特別な相手がいるらしい』っていうことはわかってた。そこに水谷さんが現れて、玲央くんのあの態度だもん。誰でも気がつくんじゃないかしら。まあ、スイートルームに水谷さんが泊まったことで、確信を得たってとこではあるけれど」

やれやれ、といった様子で瀧澤さんは息を吐く。

一葉くんは「そうですか・・・」と言いながら、右手の甲で真っ赤な顔を隠すようにうつむいた。

「ああ、そうそう。谷山さんからの情報も大きかったわよ」

言いながら、瀧澤さんは安斎さんの隣に並ぶ谷山さんに目を向けた。

谷山さんは、ふふ、と笑う。

「そうですねえ。玲央さまの水谷さんに対する気遣いは、他の方々とは全く違いましたから」

「あ、谷山さんは親族ではないのだけれど、遠縁の親戚よりよっぽど近い人だから、ここにお呼びしているの」

瀧澤さんの説明に、私はコクリと頷いた。

谷山さんは、遠慮がちに頭を下げる。

「ただの運転手の私が・・・とも思いましたが、会長からも頼まれましたので」

「うん、谷山さんはこの場に必要だからなあ。仕事帰りの水谷さんの送迎を、玲央はしょっちゅう谷山さんに頼んでいたそうじゃあないか。水谷さんはいつも断っていたみたいだけれど・・・。玲央がわざわざそんなことをするとはなあ」

「ははは」と、会長は楽しそうだった。一葉くんはずっと真っ赤な顔のまま、居心地が悪そうにしている。

谷山さんは、そんな2人の様子をニコニコしながら見守っている。

「ま、そういうこと。とにかくね、玲央くんは周りに愛されてるっていうことよ」

「・・・、どういうことですか・・・」

斜め上から話をまとめた瀧澤さんに、一葉くんは、げんなりとした様子で言葉を投げた。

けれどそれは、軽く笑顔でかわされる。

「はは。まあ、細かいことはおいといて」

ここで、会長がにこにこしながら私に目を向けた。

緊張しつつ、私もその視線に合わせる。

「水谷さん、うちはこんな感じでね。親族は他にもおりますが、玲央の周りはだいたいこんな感じです。結婚となるとめんどくさいことも多いでしょうが、まあ、仲良くしてください」

「よろしくね」

「よろしくお願いします」

会長の言葉に続き、瀧澤さんや及河さん、安斎さんに谷山さんからも「よろしく」と声をかけられた。

5人の視線が一気に私に向けられて、何とも言えない緊張感が身体の中を駆け巡る。
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