彩度beige
(・・・でも、この『特別』は・・・)


私であって、私に対してじゃないことだ。

それがわかっているだけに、複雑で、切ないような気持ちになった。


(実際、一葉くんは、リアルな私をどんなふうに見てるんだろう・・・)


きっと、私にはわからない感覚なんだと思う。

ドラマや映画の脚本家なら、彼の気持ちがわかるのだろうか。

自分がつくった役柄を、リアルに演じる俳優さんが存在し、その存在を好きになっている感じーーー・・・。


(・・・なんとなくわかる気もするけれど・・・、やっぱり、『なんとなく』しかわからないな・・・)


いずれにしても、恋愛の「好き」や「特別」とは違う感覚なのだと思う。

一葉くん自身も私にそう説明してたし・・・。

「・・・・・・」

悶々としているうちに、いつの間にか、車は駅に到着していた。

きっと、乗車時間は数分だ。

ここまで送ってもらったことに、やっぱり恐縮してしまう。

「お疲れさまでございました」

そう言って、谷山さんはブレーキをかけて車を止めると、運転席を降り、後部座席のドアを開けに来てくれた。

・・・本当に、至れり尽くせり。執事におもてなしを受けている気持ちになった。

「ありがとうございました。送っていただいて・・・、贅沢な気分が味わえました」

「そうですか。よかったら、また玲央様に言ってみてください。いつでも送迎させていただきますよ」

「い、いえ。そんな・・・」

と、遠慮する私に対し、谷山さんは、「ぜひお気軽に」と言って笑ってくれた。

だけどやっぱり・・・、この車で、谷山さんに送迎してほしいだなんて、恐れ多くて言えそうもない。

「では水谷様。またお待ちしておりますね」

「はい。本当に・・・、どうもありがとうございました」

私は深々と礼をする。

谷山さんは、「お気をつけて」と笑顔で言うと、私が駅構内に入るまでずっと見送ってくれていた。











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