彩度beige
「水谷さんには、できれば・・・、緋山さんと、あまり連絡を取ってほしくはなくて」

「え?」

「・・・、いや、お互い連絡先知ってるみたいだし、こんなこと言える立場でもないんだけど・・・。最低限にしてもらいたいっていうのが本音です。・・・ごめん、オレの勝手なわがままだけど・・・」

そう言った彼の横顔は、少し緊張しているようだった。

ーーー緋山くんと、連絡を取ってほしくない。

それは、その理由はーーー・・・、彼が「物語上の私」のことが好きだからだと、わかっているつもりだけれど・・・、今までとは何かが違うような気がして、答えをちゃんと聞きたくなった。

「・・・それは、どうして・・・?」

ドキドキしながら尋ねると、一葉くんの身体が少し強張った。

彼の頬が、わずかに赤く染まってく。

「・・・、緋山さん、明るくてかっこよかったし。水谷さんと話してる感じとか雰囲気とか見てて・・・、多分だけど、昔、2人は付き合ってたりしたのかなって」

「!?」

女心には鈍感だなって思っていたけれど、一葉くんの観察眼は鋭いようだった。

ドキッと動揺を見せた私に対し、一葉くんは、それが答えだと察したらしかった。

「・・・あの感じでお互いに連絡先消してなかったっていうことは、いい関係で終わったんだろうなっていう予想もつくし・・・。これでまたいい感じになって、水谷さんと緋山さんがヨリを戻す流れになったら困るから」

「・・・・・・」


(・・・それは・・・)


その、言葉の意味は。

ドキドキとする胸を抑えつつ、勇気を出してもう一歩、私は、彼の心に踏み込んだ。

「・・・どうして・・・、そういう流れになったとしたら、一葉くんがどうして困るの・・・?」

期待と不安。

今までと同じ答えが返ってくるかもしれないけれど、そんなふうに言われたら・・・、今までとは違う答えを、期待してしまうじゃないか。

「・・・それは・・・」

一葉くんの横顔が、さらに赤く染まってく。

こういう時、右手の甲で口元を隠す仕草をするのは、彼のクセなのかもしれない。
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