彩度beige
(・・・、2人で飲みに・・・)


学生時代に付き合った、元カレからの飲みへの誘い。

2人で・・・というフレーズに、焦るような気持ちになった。


(・・・2人で・・・って、緋山くんと2人きりになるわけだよね。本当に、ただ懐かしい、話がしたいだけかもしれないけれど・・・)


一葉くんが予想していた通り、私と緋山くんは、喧嘩別れした訳じゃなかった。

ーーー私たちが付き合い出したのは、高校2年の秋のこと。

クラスが同じで席が隣になって仲良くなって、緋山くんから告白されてーーー・・・。

それからは、下校時刻を合わせたり、お互いの部活の試合を見に行ったり、休日にお出かけしたりするという、高校生のカップルらしい、楽しい時間を一緒に過ごした。

けれど高3の夏の終わりごろーーーお互いに受験勉強が忙しくなり、よくよく話し合った末、勉強に集中するために、別れようという話になった。

喧嘩別れという訳ではないので、その後も同級生として普通に会話はしていたし、仲が悪くなることもなかった。

それは、緋山くんがあの性格だからっていうのが大きかったと思うけど・・・。

秋になり、緋山くんは早々に推薦で進学先が決定し、3月には、私も無事に第一志望の大学に合格できた。

お互いに、納得した未来を受け取ることができたと思う。

ここでもし・・・相手に気持ちが残っていたら、そこからまた付き合おうなんて話も出たんじゃないかと思うけど、私も彼も、もう、そこまでの感情は抱いていないようだった。

『じゃあ、元気でな』

『うん。緋山くんもーーー』

卒業式も、そんな当たり障りない、さっぱりとした会話で別れたことを覚えてる。

もちろん、切なさがなかったわけではないけれどーーー、『またね』という言葉はあえて使わなかった気がするし、実際、その後は一度も連絡をとっていなかった。

ーーーあれからもう、十年以上も経っている。

懐かしい気持ちがないっていう訳ではないし、話したくない訳でもないけれど・・・、緋山くんは元カレだ。

お互いに大人になって、久しぶりに2人で会ってお酒を飲んで、妙な雰囲気にならないとは限らない。


(連絡も最低限にしてほしいって言われたくらいだし・・・、今はただ、一葉くんの言葉を待っていたいし)


・・・断ろう。

『ごめん、仕事が忙しくて・・・』と、早速緋山くんに返事を送る。

そのメッセージに既読はすぐについたけど、緋山くんからの返事はなかなか返ってこない。

気分を悪くさせたかな・・・と思っていると、予想外の返信が。

『水谷、一葉さんと付き合ってるの?』


(!?、えっ!!??)


ここでまさかの質問だった。

メッセージの画面を見ながら、私は大きく動揺してしまう。
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