彩度beige
うふふ、と、意味深な視線を私に送る芳江さん。

智津さんは何を言ったんだろう・・・と、モヤモヤしつつ、私は頬が熱くなる。

「・・・水谷」

と、そこで、緋山くんから声をかけられた。

見ると、緋山くんがやけに真剣な顔をしていてドキリとなった。

「これで仕事が一旦落ち着いたんなら、これから一緒に飲み行かない?」


(え!)


驚きと焦りのような感覚で、心臓がビクリと跳ね上がる。

ここで・・・、一葉くんの前で言われるなんて、動揺せずにはいられなかった。

「別に、飲まないで夕飯だけでもいいし。どうせ食うだろ?」

「・・・、それは・・・」

「少しでいいから付き合って。なんでも奢るし」


(ど、どうしよう・・・)


断りずらい状況になってしまった。

今更、仕事が忙しいとか明日早いからなんて言えないし、夕飯食べないなんて理由も言えない。

どう断ったらいいだろう。

焦ってしまって、言い訳すらも出てこない。

どうしよう・・・と、ひたすら言葉に詰まっていると、「水谷さん」と、一葉くんから声をかけられた。

「ごめん、今思い出したんだけど、棚橋さんに頼まれてることがあったんだ。水谷さんしかできないことだから、悪いけど、残ってやっていってくれますか」


(!)


「は・・・、はい!」

「遅くなると思うから、夕飯はこちらで用意しますので。ゆっくり取り組んでもらえれば」

「っ、わかりました・・・」


(・・・これは・・・、本当に仕事があるのかな?それとも・・・・・・)


緋山くんに申し訳なさを感じつつ、一葉くんの対応に、胸がドキドキしてしまう。

一葉くんは、無表情で緋山くんに頭を下げた。

「・・・そういうことなので、申し訳ありません」

「・・・あー・・・、まあ、別にいいっすよ。絶妙すぎるタイミングだなって思うけど」

言いながら、緋山くんは一葉くんに鋭い視線を向けた。

一葉くんも、それを受けるかのように視線を返す。

緋山くんと一葉くん、2人の間に火花のようなものが散る。

なんともいえない緊張感が漂って、私はハラハラしてしまう。

と、少しして、緋山くんは諦めたようにはあっと小さく息を吐く。

「・・・とりあえず、今日はおとなしく帰ります。納品も無事に終わったし、今日は争いたくないし。・・・じゃあ、またな水谷」

「っ、うん」

緋山くんは笑顔で私に右手を上げると、そのまま会議室を後にした。

ほっとする気持ちとともに、どこか後味が悪い感覚も胸に残ってる。

パタン、とドアが閉まる音。

芳江さんは、閉まったドアを眺めつつ、「あらまあ・・・」と言いながら、やけにワクワクした顔をしていた。









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