『春・夏・秋・冬~巡る季節』
冬の墓石を見つめながら、私たちの胸中には様々な思いが過ぎった。


人身売買なんて非道なことをしていたのは、病気のお母さんのことがあったからじゃないかって、春伝いに夏から聞いた。

冬は、優しかったものね。

お母さんのこと、助けたかったんだよね。

だからって、冬のしていたことは人としてやってはいけないことだったんだけど。


でも……私たちに見せてくれた貴方の微笑みは、嘘じゃなかったって、信じてるよ。


冬……。


「誕生日、おめでとう」


──1年前。

言えなかった言葉。

やっと言えたね。



ねえ、冬。

私、今でも貴方が好きだよ。

好きで……いさせて?



私の視界に映る、夏の笑顔。

それを見ないように軽く目を閉じて、少し辛口のシャンパンを口に含んだ。








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