夏の序曲
第21話 2学期の始まり
夏休みが終わり、学校生活が再び始まった。
朝から晴れた空が広がり、悠斗は久しぶりに制服を着て自転車をこいでいた。
(今日からまた学校が始まるか…。でも、いつも通り朝練からスタートだ。)
部室に着くと、すでに錬が準備を終えた様子でトロンボーンを手にしていた。
「おはよう、悠斗。」
「おはよう。いよいよだな、コンクールまであと少しだ。」
そんな軽いやり取りを交わしながら、それぞれの楽器の音が校舎に響き始めた。
短めの朝練を終えると、2人は始業式が行われる多目的ホールに向かった。
始業式では、校長先生の長い話に耳を傾けるふりをしながら、悠斗は自然と部活のことを考えていた。
式が終わり、教室に戻ると友人たちが夏休みの話題で盛り上がっている。その様子を眺めながら、悠斗は受験が近づいてくることを実感した。
(でも、まずはコンクール、最後まで全力でやりきるだけだ。)
放課後、部室に向かう悠斗の足取りは自然と早くなった。
9月に入ってからというもの、1日が過ぎるのがあっという間に感じる。
その日も練習を終えた悠斗は、いつもと同じように自転車を走らせていた。夏の熱気がまだ残る夕暮れ時、ふと肌に感じる風にわずかな涼しさが混じる。
(コンクールまであと3日…。最後まで気を抜けない。)
そんなことを考えながら、駅に近づくと、駅前の道を歩く見覚えのある後ろ姿が目に入った。
「紗彩!」
声をかけると、振り返った紗彩が軽く手を挙げて笑顔を見せた。
「悠斗、お疲れさま。」
悠斗は自転車を降り、二人は並んで歩き始めた。いつの間にか、こんな帰り道が自然になっていた。
しばらくたわいない会話を続けた後、紗彩がふと思い出したように口を開いた。
「いよいよ、コンクールだね。練習、大変でしょ。」
気づかうように、紗彩が切り出した。
「ああ、でもあと少しだからさ。これまでやってきたことを出し切るだけだよ。」
悠斗は自分に言い聞かせるように答える。
少しの沈黙の後、紗彩がふと思い出したように口を開いた。
「コンクールの日、私も聴きに行くね。」
その言葉に、悠斗は驚いたように目を見開く。
「えっ、いいのか?練習とかあるだろ。」
「うん、あるけど…コンクール聞きに行くのは部活の延長みたいなものだし、大丈夫。」
紗彩は軽く肩をすくめて、どこか楽しそうに言った。
「それに…」紗彩は少し間を空けて続ける。
「わたし、悠斗の彼女ってことになってるんだから、コンサート会場にいてもおかしくないでしょ。」
紗彩は冗談めかした口調で笑ったが、その目にはどこか真剣な色が混じっていた。
悠斗は答えに詰まり、一瞬視線をそらす。
「そっか…まあ、そうだよな。」
言葉に詰まる自分を誤魔化すように返すが、胸の奥が妙にくすぐったい。
二人は再び歩き出し、話題は軽い日常の話に戻った。だが、悠斗の胸の中には、紗彩の言葉がじんわりと温かく響いていた。
朝から晴れた空が広がり、悠斗は久しぶりに制服を着て自転車をこいでいた。
(今日からまた学校が始まるか…。でも、いつも通り朝練からスタートだ。)
部室に着くと、すでに錬が準備を終えた様子でトロンボーンを手にしていた。
「おはよう、悠斗。」
「おはよう。いよいよだな、コンクールまであと少しだ。」
そんな軽いやり取りを交わしながら、それぞれの楽器の音が校舎に響き始めた。
短めの朝練を終えると、2人は始業式が行われる多目的ホールに向かった。
始業式では、校長先生の長い話に耳を傾けるふりをしながら、悠斗は自然と部活のことを考えていた。
式が終わり、教室に戻ると友人たちが夏休みの話題で盛り上がっている。その様子を眺めながら、悠斗は受験が近づいてくることを実感した。
(でも、まずはコンクール、最後まで全力でやりきるだけだ。)
放課後、部室に向かう悠斗の足取りは自然と早くなった。
9月に入ってからというもの、1日が過ぎるのがあっという間に感じる。
その日も練習を終えた悠斗は、いつもと同じように自転車を走らせていた。夏の熱気がまだ残る夕暮れ時、ふと肌に感じる風にわずかな涼しさが混じる。
(コンクールまであと3日…。最後まで気を抜けない。)
そんなことを考えながら、駅に近づくと、駅前の道を歩く見覚えのある後ろ姿が目に入った。
「紗彩!」
声をかけると、振り返った紗彩が軽く手を挙げて笑顔を見せた。
「悠斗、お疲れさま。」
悠斗は自転車を降り、二人は並んで歩き始めた。いつの間にか、こんな帰り道が自然になっていた。
しばらくたわいない会話を続けた後、紗彩がふと思い出したように口を開いた。
「いよいよ、コンクールだね。練習、大変でしょ。」
気づかうように、紗彩が切り出した。
「ああ、でもあと少しだからさ。これまでやってきたことを出し切るだけだよ。」
悠斗は自分に言い聞かせるように答える。
少しの沈黙の後、紗彩がふと思い出したように口を開いた。
「コンクールの日、私も聴きに行くね。」
その言葉に、悠斗は驚いたように目を見開く。
「えっ、いいのか?練習とかあるだろ。」
「うん、あるけど…コンクール聞きに行くのは部活の延長みたいなものだし、大丈夫。」
紗彩は軽く肩をすくめて、どこか楽しそうに言った。
「それに…」紗彩は少し間を空けて続ける。
「わたし、悠斗の彼女ってことになってるんだから、コンサート会場にいてもおかしくないでしょ。」
紗彩は冗談めかした口調で笑ったが、その目にはどこか真剣な色が混じっていた。
悠斗は答えに詰まり、一瞬視線をそらす。
「そっか…まあ、そうだよな。」
言葉に詰まる自分を誤魔化すように返すが、胸の奥が妙にくすぐったい。
二人は再び歩き出し、話題は軽い日常の話に戻った。だが、悠斗の胸の中には、紗彩の言葉がじんわりと温かく響いていた。