夏の序曲
第3話 一抹の不安
悠斗は自宅に戻ると、トランペットケースを開けた。
「さっさと済ませないとな…。」
練習後、喫茶店に急いだせいで、整備が途中になっていた。
ウォーターキーを押しながら管内の水分を抜き、抜差管をゆっくり外してスワブを通す。管の内側を拭き取るたびに、ディズニーメドレーの掛け合い部分が頭の中で再生される。
「掛け合いをもっと滑らかに…錬の音とぴったり合わせられるようにしないと。」
自分のトランペットと錬のトロンボーンが響き合う場面を、脳内で何度もシミュレーションする。
抜差管を元に戻し、楽器全体をクロスで軽く磨く。最後にマウスピースを取り出し、柔らかい布で丁寧に拭き上げてケースに収めた。
「まずは定期演奏会を成功させて、それからコンクールだ。」
自分に言い聞かせるように呟きながら、トランペットケースを閉じる。しかし、その言葉とは裏腹に、頭の片隅には一つの不安が残っていた。
「錬に美玖を紹介したことで、コンクールに向けた練習が疎かになったらどうする…?」
錬の真面目さも、美玖がブラスバンド部員であることも知っている。二人がコンクールの重要性を軽視するとは思えない。
だが、今回の計画が二人にどんな影響を与えるのかは、悠斗には読めなかった。
「余計な心配…だよな。」
小さく息を吐き、悠斗は机に向かい直した。鉛筆を手に取り、過去問演習に集中する。
静かな部屋に、紙に書き込む鉛筆の音だけが響いていた。
「さっさと済ませないとな…。」
練習後、喫茶店に急いだせいで、整備が途中になっていた。
ウォーターキーを押しながら管内の水分を抜き、抜差管をゆっくり外してスワブを通す。管の内側を拭き取るたびに、ディズニーメドレーの掛け合い部分が頭の中で再生される。
「掛け合いをもっと滑らかに…錬の音とぴったり合わせられるようにしないと。」
自分のトランペットと錬のトロンボーンが響き合う場面を、脳内で何度もシミュレーションする。
抜差管を元に戻し、楽器全体をクロスで軽く磨く。最後にマウスピースを取り出し、柔らかい布で丁寧に拭き上げてケースに収めた。
「まずは定期演奏会を成功させて、それからコンクールだ。」
自分に言い聞かせるように呟きながら、トランペットケースを閉じる。しかし、その言葉とは裏腹に、頭の片隅には一つの不安が残っていた。
「錬に美玖を紹介したことで、コンクールに向けた練習が疎かになったらどうする…?」
錬の真面目さも、美玖がブラスバンド部員であることも知っている。二人がコンクールの重要性を軽視するとは思えない。
だが、今回の計画が二人にどんな影響を与えるのかは、悠斗には読めなかった。
「余計な心配…だよな。」
小さく息を吐き、悠斗は机に向かい直した。鉛筆を手に取り、過去問演習に集中する。
静かな部屋に、紙に書き込む鉛筆の音だけが響いていた。