夏の序曲

第３０話 ３学期のスタート

冬休み明け、3学期初日の朝。始業式を終えた悠斗は、教室に戻ってきた。
すでに友人たちが席について談笑している中、悠斗は自分の席に向かった。

「やっと3学期か。今日は共通テストの説明だけだろ。」
隣の席の滝沢丈二が軽く肩をすくめながら呟いた。

その言葉通り、担任の田辺先生が教室に入ってくると、まずは3学期の過ごし方についての一般的な話が始まった。
「3年生は、最後の山場になります。それぞれの受験スケジュールに合わせて、計画的に勉強を進めてください。」
教室の中が一瞬ざわつくが、先生の視線が全員を見渡すと、すぐに静けさを取り戻した。

次に、共通テストを受けない生徒たちへの説明があり、私立専願の受験生たちは先に帰宅するよう促された。
丈二が席を立つと、悠斗に一言声をかけてきた。
「俺は先に帰るわ。お前、共通テストも控えてるけど、無理しすぎんなよ。」
「おう。ありがとな。」悠斗は軽く手を挙げて丈二を見送った。

私立組が教室を出た後、共通テストを受ける生徒たちに向けた説明が始まった。
田辺先生が資料を配りながら言った。
「当日は緊張するだろうけど、忘れ物をしないように。持ち物チェックリストを配るので、確認しておくこと。それから、マークシートの記入ミスには注意するように。特に受験科目のマーク漏れ、マークミスには注意が必要だ。」

配られた資料には当日のスケジュールや注意事項が細かく記載されていた。
「試験が終わったら、翌月曜日に学校で自己採点を行うので、正確な自己採点ができるよう、マークした選択肢は問題用紙にチェックしておくように。」
説明が終わると、教室内はどことなく緊張感が漂い始めた。

説明が終了し、担任が教室を出ると、悠斗も鞄を手にして教室を後にした。
廊下を歩きながら、自分の心の中で呟いた。
（いよいよ、だな…。この冬休みでやれることはやったけど、やっぱり不安は拭えない。）

帰り道、自転車をこぎながら、共通テストでの成功を祈るように青空を見上げた。
（まずはこの試験を乗り越えなきゃ、その先には進めない。）

冷たい風を受けながらも、悠斗の心の中には静かな決意が灯っていた。