夏の序曲

第31話 共通テスト

冬休み明けから、悠斗は共通テストに向けた追い込みを本格化させていた。
「国語と地歴公民、これが一番の難関だな…。」
悠斗は机の上に並べた問題集を見てため息をついた。2次試験にはない科目に時間を割くのは、もどかしさも感じるが、足切りされないためには避けられない。

（英語と数学は2次試験でも使うから得意科目として伸ばしたい。理科もまだ何とかなる。でも、国語と社会は本当に厳しい…。）
そう考えながらも、悠斗は手を止めずに問題を解き続けた。

夜、ふとLINEの通知音が響く。紗彩からのメッセージだ。
「今日もお疲れさま。勉強ばかりで大変だと思うけど、無理しないでね。」
その一文が、凝り固まった悠斗の心をわずかにほぐした。
「ありがとう。国語と社会がやばいけど、がんばるよ。」
返信を打ちながら、心に少しだけ余裕が戻るのを感じた。

朝の冷たい空気の中、悠斗は試験会場へ向かっていた。
家を出る直前、母親からの「がんばっておいで」という言葉と、紗彩からのLINEが届いていた。
「いよいよだね！私は何もできないけど　悠斗なら大丈夫だって信じてるよ」
そのメッセージが胸を温め、気持ちを引き締めた。

1日目は「地歴公民」「国語」「英語」。
「よし、地歴公民はなんとか乗り切った。次は国語だ…。」
国語では予想外に難しい設問に戸惑ったが、最後まで粘り強くマークシートを埋めた。
「英語はまあまあ…でも、まだ不安が残るな。」
試験を終えた帰り道、悠斗は疲労感と不安を抱えながらも、自分を奮い立たせた。
（まだ1日目だ。明日に集中しよう。）

翌日、「理科」「数学」「情報」の科目が待っていた。
朝、会場に向かう途中で、再び紗彩からLINEが届いた。
「2日目もファイト！うまくいくといいね」
短いメッセージだったが、それが悠斗の背中を押してくれた。

理科の試験では、しっかり対策していた分、手応えを感じられた。
「数学は自分の得意科目。ここで挽回しないと…。」
集中力を切らさずに問題を解き、最後の「情報」でも全力を尽くした。

試験を終えた帰り道、悠斗は深い息をついた。
（明日、自己採点だ。足切りラインを超えてるかどうか…）
疲れた顔をしながらも、少しだけ安堵の表情が浮かんでいた。

月曜日の朝、共通テストを受けた生徒たちは学校に集まった。
悠斗も緊張した面持ちで教室に入り、自分の席に座ると、配られた解答用紙を広げた。
悠斗は鉛筆を手に取り、一つ一つの答えを慎重に確認していった。

１時間後、自己採点を終えた悠斗は、小さく息を吐いた。
（悪くはない。これなら、足切りには引っかからなさそうだな…。）
結果を学校に提出すると、その日の午後には早々に帰宅した。

家に戻り、少し休憩を取った後、悠斗はスマホを手に取った。
紗彩からのLINEが届いていた。

紗彩: 「自己採点お疲れさま！どうだった？」
悠斗: 「まだ完全には安心できないけど　たぶん足切りは大丈夫そう」
紗彩: 「よかった！悠斗なら大丈夫だと思ってたよ」
悠斗: 「ありがとう　でもまだ願書を出すまでは気を抜けない」
紗彩: 「そっか　願書ってこれからなのね　応援してるよ！」

数日後、予備校からの分析結果が届いた。
（よし、足切りは超えてそう。これで、第一志望校に挑戦できる。）
悠斗は机に座り、あらかじめ取り寄せた願書に記入しながら小さく頷いた。

再び紗彩にLINEを送る。
悠斗: 「分析結果届いた　第一志望校に願書出すよ」
紗彩: 「すごい！本当にあと少しだね」
悠斗: 「うん　全力で頑張るよ」