Summer Love
全てのピースが揃った気がして、視界がクリアになると同時に、純奈に対して罪悪感が膨らむ。
「それで、私は修先生にお願いがあるの」
しっかりと向き合った花子さん。
「もう、純奈に近づかないでほしいの」
予想をはるか上回る。
「え……今なんと……?」
「純奈にもう二度と近づかないで」
アールグレイが入ったコップを、皿に置く。
ティーカップの紅茶は溢れ、俺の顔はぐちゃぐちゃ。
「どうして……」
「あなた達、二人の為………としか言えないわ」
「「二人の為」のため?」
「まさか……本当に、覚えていないわけ?」
何のことを尋ねているのか、分からないとはこの事で。
「お……俺はーー真相を知りたいってのもあります。でも……まずは純奈に謝らなければならいことがあるんです。それは……できません」
「そう……ならーーー」
差し出された銀のシルバーのネックレス。
これは………純奈にプレゼントした物だ……なぜ持ってるんだ……。
「これを、校長に差し出して孫が修先生に口説かれたと公言しに行きます」
冷や汗がスルスルと溢れ出るように、悪寒が迫って来る。
それは、まずいかもしれない。
確かに、これは純奈に限って渡したわけではない。
他にも、行けなかった不登校の子どもたちにも配ったから。
でも、あの時の俺は純奈に「俺がお前を守ってやる」的な事を零している。
その事を純奈が、あの精神状態で喋りだすことがあったら………俺の教師人生は終わりだ。
これから、母さんを支えなければならない働き盛りの時に、公務員以上のお金を稼がなければまずいのに。
「………わかりました。もう、かかわることは控えます」
「分かってくれたかしら。席を外してちょうだい。話すことはないわ」
何も結局は分からず、降りしきる雨の中。
轟々と荒れる海を見つめて、俺はただ一人だけのエントランスホールに立ち尽くす意外に方法はなかった。
*