Summer Love


全てのピースが揃った気がして、視界がクリアになると同時に、純奈に対して罪悪感が膨らむ。



「それで、私は修先生にお願いがあるの」



しっかりと向き合った花子さん。



「もう、純奈に近づかないでほしいの」




予想をはるか上回る。



「え……今なんと……?」



「純奈にもう二度と近づかないで」



アールグレイが入ったコップを、皿に置く。



ティーカップの紅茶は溢れ、俺の顔はぐちゃぐちゃ。



「どうして……」



「あなた達、二人の為………としか言えないわ」



「「二人の為」のため?」




「まさか……本当に、覚えていないわけ?」




何のことを尋ねているのか、分からないとはこの事で。



「お……俺はーー真相を知りたいってのもあります。でも……まずは純奈に謝らなければならいことがあるんです。それは……できません」



「そう……ならーーー」




差し出された銀のシルバーのネックレス。



これは………純奈にプレゼントした物だ……なぜ持ってるんだ……。



「これを、校長に差し出して孫が修先生に口説かれたと公言しに行きます」



冷や汗がスルスルと溢れ出るように、悪寒が迫って来る。



それは、まずいかもしれない。




確かに、これは純奈に限って渡したわけではない。



他にも、行けなかった不登校の子どもたちにも配ったから。




でも、あの時の俺は純奈に「俺がお前を守ってやる」的な事を零している。



その事を純奈が、あの精神状態で喋りだすことがあったら………俺の教師人生は終わりだ。


これから、母さんを支えなければならない働き盛りの時に、公務員以上のお金を稼がなければまずいのに。


「………わかりました。もう、かかわることは控えます」




「分かってくれたかしら。席を外してちょうだい。話すことはないわ」



何も結局は分からず、降りしきる雨の中。


轟々と荒れる海を見つめて、俺はただ一人だけのエントランスホールに立ち尽くす意外に方法はなかった。


< 60 / 124 >

この作品をシェア

pagetop