敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
10.幸せなすれ違い
「ここも?」
 不意に首元にされたキスはくすぐったかったけれど、その中に見逃すことのできない感覚が含まれていた。

「ふっ……あ、んっ……」
 甘えたような嬌声が漏れてしまって、慌てて香澄は口を手で抑える。

 神代は抑えたその手を掴んで口元からゆっくりと離した。柔らかく微笑んでいる。
 ──天使みたい。

 ヘーゼルアイなのだと言っていたその瞳に香澄はいつもぼうっと釘付けになってしまうのだ。
 その綺麗な瞳と顔が近くで香澄を覗き込んでいる。

「声を聞かせて、と言ったら怒りますか?」
 きっと真っ赤になっている顔を神代の方も近くで見ているのだろう。ふるふるっと香澄は首を横に振る。

「よかった。香澄さんの声、好きなんです。澄んでいて高くもなく低くもなくて。しかもあんな我慢できない声は刺さります」
 香澄の両手を持って、神代は香澄をそっとベッドに押し倒した。

 とさっとベッドに寝転ぶと寝具から神代の香りがするような気がして、香澄はどきんとする。

「あ……」
「ん? どうかした?」
「いえ。佳祐さんの香りが」

 そう言うと神代はぴくっとした。
「え? ホントですか? 匂いには結構気をつけてるつもりなんですけど」
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