敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
 どう勘違いしたものか、神代は早口で慌てているのだ。そんな神代を見ることは少ない。思わず香澄は笑ってしまった。

「違いますよ? いつもの佳祐さんのフレグランスがきっと寝具にも移ってしまってるんです」
 それがとてもよい香りで、香澄にとって安心するものになっていると神代は知らないかもしれない。

「私にはとってもいい香りです」
「全く……」
 するっと指の背が香澄の頬を撫でていった。優しく柔らかい触れ方にもっとたくさん触れてほしくなってしまう。

 つい、その指にすり……と頬を擦り付けてしまうと、きゅっと神代の口元が上がった。
「そんな可愛い仕草をして、知りませんよ?」

 シャツワンピースを着ていた香澄の前ボタンを神代がひとつずつ外していく。
 その手がボタンを外す度に香澄の鼓動は大きくなってゆく気がした。

 ウエストを結んでいるリボンが解かれ、ボタンもどんどん外されて肌が空気に晒されると、香澄は心もとない気持ちにもなる。

 いやではない。覚悟もしている。
 けどこの鼓動を抑えることはできなかった。

 ボタンを外し終わると、神代は立ち上がって部屋の電気を暗くしてくれる。

 そしてベッドのサイドテーブルの上にあった電気スタンドに手で触れた。
 ベッドの周りがふわりと明るくなる。
< 106 / 196 >

この作品をシェア

pagetop