敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
「そういうものなんですね」
 神代の疑問が解消されるまで彼女はにこにことしながら香澄の側に立っていた。

「佳祐さん、こちらが今日ご招待くださった岡野(おかの)芳睡(ほうすい)先生です。芳睡さん、こちらは……」

「翠澄先生の彼氏さんですか?」
 興味津々のきらきらとした表情で聞いてくる。

「えーっと……」
 彼氏……? なのだろうか?
「婚約者です」
 返答に困っていた香澄を助けるように神代が言ってくれた。

(こ、婚約者!)
 お見合いの相手をどうやって説明したらいいのか香澄には分からなかったが、確かにその通りだった。

 結婚を約束しているのだから、婚約者で間違いはない。
「えー! 翠澄先生、いつの間に? 素敵な方ですねぇ」
「神代と申します」

 香澄は顔を赤くしてそっと神代の服の端の方を引っ張った。
「あの……嬉しいですけど、そんな風に言ってしまっていいですか?」

「もちろん」
 にこりと笑った神代に胸がきゅんとする香澄だ。
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