敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
13.臨む!
『で、一緒にパフォーマンスするはずだったのに、食あたりで入院しちゃったんですよぉ』
「え? 食あたりで入院?」

 芳睡が連絡してきたのには理由があった。
 今週一緒に書道パフォーマンスをするはずだった知人が入院してしまったというのだ。

『それが、怖い話で身体から出る水分量が多くて、脱水を起こしかけてたらしいんです』
「脱水……それはたいへんね」

『本当はショッピングセンターの催事で一緒にパフォーマンスする予定だったんですよー! もう先方には準備していただいているし、誰か他に心当たりはないかと言われまして』

 芳睡とは一年近く前にデザイン関係のイベントがあった際、一緒にパフォーマンスをしたことがあり、その経験を香澄も文化祭に活かしていたのだ。

『あの時のデザインコンペティションのときのパフォーマンスと同じでいいと思うんです』
「同じパフォーマンスで良ければ構わないですよ」

『本当ですか!? ありがとうございます!』
 そんな電話で思いがけず一緒にパフォーマンスをすることとなったのだ。

 本当は神代に知らせたら喜ぶだろうなということも、一瞬香澄の頭をよぎった。
 けれど、あれ以降神代からの連絡はなかった。
< 140 / 196 >

この作品をシェア

pagetop