敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
 なんとなく香澄からも連絡しづらかったうえに、日程が明後日の金曜日の日中という日にちも差し迫ったものだったので、知らせるのはやめておいたのだ。

 当日は袴姿に髪も邪魔にならないようポニーテイルにして、襷をかける。

 香澄は先ほどショッピングセンターの偉い人に散々お礼を言われたところだ。
 メンバーが一人入院したと聞いた時は催事を開催できないかと思ったが、変更してでもできることが非常に助かったということだった。

 少しでも役に立てば嬉しいことだ。
 パフォーマンスの時はたくさんの人が見に来るのでなるべく元気になるような言葉を選択するようにしていた。

 岡野が香澄に声をかける。
「私は文字は『チャレンジ』にします。敢えてカタカナにすることも挑戦ですし、ほら、書って難しい漢字でなきゃいけないってイメージもあると思うんですよね」

 選択が岡野らしかった。
 確かに展覧会では決まりがいろいろとあるがその中でカタカナの文字を選択されている人もいる。

 別にダメではないのだ。
 イメージを変えるためには確かにいいかもしれない。

「うん。いいんじゃないでしょうか。私は同じような意味で敢えて『(のぞ)む』にしましょう」
「うわー! すっごくいいです! 二枚で一枚って感じですね」
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