敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
 神代としては今はスーツよりスマートフォンの方が大事だった。
 今のスマートフォンなら多少の防水機能はあるはずなので水没したからとすぐにダメにはならないはずだが、沈んで時間が経てば保証の限りではない。

「お待たせしました。すぐに拾います!」
 従業員がそう言って網を持ってきたときは五分ほども経過しており、沈んだままのスマートフォンを見ながら、神代はなんとも言えない気持ちを噛みしめていた。

 会社へ戻り執務室に入ると、タオルにくるまれビニール袋に入ったスマートフォンを秘書の高村は目の高さに掲げている。
「米と一緒にいれておくと米が吸水して乾く……らしいですが。お試しになりますか?」

「何年前の対処法なんですか。今は防水機能があるらしいのでよほど大丈夫かと思いますが、基盤まで水が浸入していれば当然ダメになってしまう。とりあえず電源を落として乾いたタオルで丁寧に拭いたところですよ。かといって気軽に電源を入れてショートするのも怖いので、一両日は乾かして様子を見ようかと思ったところです」

「正しい対処法ですね。CEOのスマートフォンは最新ですので、プールに落としても最長三十分までは大丈夫とメーカーの説明にはありますよ」
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