敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
14.はじめてのお泊まり
 * * *
 
 ──できる!
 あの時はそう思ったのだ。パフォーマンスが終わってすぐのあの時は……。

(……きっとできる、はず多分……?)
 パフォーマンス直後は気持ちが高揚していたが、今はだいぶ落ち着いている。

 あんなに高揚していて、できる! と思ったはずなのに落ち着いた気持ちになってしまっているのが香澄には謎だった。

 アドレナリンというものをあまり意識したことがないからだろう。
 あのパフォーマンスが終わった直後はアドレナリンの過剰分泌によりできる! と思ってしまっていたのだと香澄は気づいていない。

(電話ってどうやってかけるんでしたっけ?)
 お風呂も入った。
 スキンケアもした。
 明日の準備もできている。
 あとは電話して、仲直りして寝るだけ……なのだが。

 画面に神代の名前を出してはみるものの、香澄はなかなか通話ボタンを押せずにいた。その時だ。
 着信を知らせる振動があって、香澄の心臓は止まりそうになった。

「は……はい!」
『香澄さん? なんか電話に出るの、早くないです?』
「あ……」

 電話の向こうから聞こえてきたのはまさに神代の穏やかな声で、香澄はぎゅうっとスマートフォンを握りしめてしまった。

「実は、ちょうどかけようとしていました」
『それは気が合いますね』
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