敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
 優しい声。いつもの神代だ。
『ちょっとご連絡できなくてすみませんでした。いろいろと事情があって……』
「いいです」
 もう、そんなことはよかった。こうして今声が聞ければそれでいい。

『うーん。でも誤解されたくないので、言い訳したいです』
 その言い方が可愛らしくて笑ってしまった。

「いいんです。こうして今お元気で声が聞けたらそれだけで……」
『ははっ、まるで遠くにでもいっていたようだな。え……? ちょっと香澄さん、もしかして気持ち的に距離を置いていたとかじゃないですよね? 俺、婚約は解消しませんよ』

 いつでも神代の意志は固い。
そんなところにどれほど助けられてきただろう。
 最初から、香澄を見つけ出した時から神代は真っすぐに香澄のことを見つめてくれていた。

 香澄は胸がきゅっとして、くすぐったいような嬉しいような気持ちになり、軽く笑みを漏らす。
「うふふっ、不思議ですね。声を聞けるだけでもいいって思っていたのに、こうして声を聞いたら会いたくなっちゃいました」

『香澄さん……。俺も会いたいです。お迎えに行ってもいいですか?』
「え、でも私メイクも落としてしまって」
『構いません。泊まれる準備をしてきませんか?』
< 152 / 196 >

この作品をシェア

pagetop