敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
「香澄さんが謝るようなことは何もありませんよ」
「けど、私の展覧会での態度はとても悪かったと反省しています。その間、神代さんともう会えないかもとか……いろいろ考えてしまって」

「やはりそんなことを考えていたんですね」
 だって香澄は交際をしたことがないのだ。
 もちろん二人はお見合いという関係性だけれど、現在はまだ交際期間中である。

 こんな風になったときにどうしたらいいのか香澄は分からない。
 ふっと目元の辺りを笑ませて、いつもと変わらない神代に香澄は泣きそうになってしまった。

(いつもの……いつもの神代さんだわ)
「俺もきちんと説明しなかったのは悪かったと反省しました。清柊先生に少しいじわるされたんですよ」
「え? 清柊先生が?」

「それは個人的なお気持ちもあったものですから仕方ないです。俺も怒っていませんし、怒らないことを清柊先生も分かっておやりになっていたことだからいいんです。けど……香澄さんがそういう目にあったことがないか、心配だっただけです」

「いえ! 清柊先生は普段、それは厳しいこともありますけど、むやみやたらといじわるすることはありません」

 清柊のいじわる、というのが想像できないが、神代は笑っているので本気で怒っているわけでもないようだ。
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