敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
「もともと神代さんとはお見合いだったのだし、神代さんからもお見合いを進めますと柚木の家に正式にご回答してくださっているんだから、何も問題はないわよ? 神代さんも大きな会社を経営していらっしゃるのだから十分に判断力のある方でしょう」

 母にも神代は絶大な信頼感があるのかと思うと改めて尊敬してしまう。

 しばらくすると自宅の呼び鈴がなった。
「はぁい」
 母が玄関に出る。
 神代だろうと思ったので香澄も一緒に玄関へ向かった。

 神代はスーツ姿だった。
 ──自宅に帰ってきて、着替えもしないまま電話をしてくれて、そのまま迎えに来てくれたんだ。
 そう思うと胸がきゅんとする。

「神代さん、こんばんは」
 母のご機嫌な声が聞こえた。
「遅い時間に申し訳ありません。香澄さんをお迎えに来ました」

「こちらこそ、遅い時間にわざわざありがとうございます。よろしくお願いいたしますね」
 以前にも見たことのある光景だ。やはりこんな時は少し照れくさい気持ちになる。

 車に案内され、神代の自宅に向かう。
 それほどの時間がかかるわけではないが、神代は珍しく黙ったままだった。

「あの……怒っていますか?」
 そっと聞くと「いえ」と神代からはすぐに返事がある。

 けれど香澄の方を向いてくれないのが香澄は寂しかった。
「ごめんなさい」
 そう言うと神代は驚いたように香澄の方を見る。
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