敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない
「来月に展覧会があります。私は作品を見に行くだけなのですが、もしもご都合が合えば一緒に行かれますか?」
「香澄さんが解説してくださるなら。俺はあまり詳しくないので」

 少し強引に誘ってしまったかな? と香澄は思ったのだが神代はイタズラっぽくにっと笑いかけてきた。
「デートですね」

 確かに二人で出かけるならデートとも言えるのかもしれない。
 そんな風に言われたら意識してしまって途端に顔が熱くなって、香澄の鼓動がどきどきと大きな音を立てる。

「確かにそうですね」
 俯いてそう言うとくすっと笑った声が聞こえた。
「香澄さん、からかったわけではないんです。嬉しくてつい。楽しみにしていますから」

 テーブルの上に置いてあった手を思いがけなく握られて、香澄はどきんとする。
 きゅっと握ったその手はすらりと長く骨ばっていて男性らしい。

 自分とは違う手のひらや体温に香澄はどきどきと胸を高鳴らせていた。

 食事を終えた二人は駐車場に向かい、神代の車に乗り込む。
 香澄は普段から車に乗ることも多いがそれは運転手付きの車で後部座席に乗ることが多かった。

 だから「どうぞ」と言われて助手席のドアを開けられた時は少し戸惑ってしまったのだ。

(それは、そうよね)
 交際しているのなら座るのはその席だろう。
「ありがとうございます」
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