お見合いの場で「おまえは好みではない」と言われた令嬢の攻防戦
 顔をもっとよく見せてくださいと、キャスリンはアーノルドの顔をのぞき込む。
「や、やめろ。こんな醜い姿は見せたくない」
「わたくしは殿下を醜いだなんて、一言も申しておりません。それは殿下がご自分でそう思っていらっしゃるだけでは?」
 キャスリンは絹の手袋を外し、素手でアーノルドの頬をなで始める。ざらりとした感触が指の先から伝わってくる。これは、鱗のようなものではなく鱗そのものだ。
「これは、神竜の力によるものですね? 父が言っていたとおりです。さすがアーノルド殿下。神竜に愛されていますね」
 その言葉でアーノルドの表情が少し和らいだ。
「な、なんだと? これは、皮膚病ではないのか?」
「えぇ、違います。これはソクラス国を昔から守護している神竜の力によるものです」
 ソクラス国は神竜を信仰している。神竜とは竜族の中でも上位に位置する竜。他には天竜や魔竜などと呼ばれる竜も存在し、それぞれどこかの国の信仰対象となっている。
「そんなこと、誰も言わなかった。俺が十歳になったとき、突然、顔がこのような鱗で覆われた。医師は、何かの皮膚病だろうと」
「そうですね。医師からみれば皮膚病に見えるでしょう。ですが、わずかに神竜の力を感じます。ですからこれは、神竜の力によるもの。殿下がその力をご自分のものにされたときには、この鱗も吸収されます」
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