お見合いの場で「おまえは好みではない」と言われた令嬢の攻防戦
「治るのか?」
「治るという表現は的確ではございません。消えるもしくは吸収されるといったほうが正しいかと」
 キャスリンはアーノルドの頬をゆっくりと愛でるように触れる。
「おまえに触れられると、痛みがやわらぐ感じがする」
 紫眼が気持ちよさそうに細められた。
「やはり、痛むのですね?」
「あぁ、たまにな」
「医師は痛み止めの薬を処方していた、で間違いありませんね? この部分に塗り薬などは?」
「塗り薬はないと言われた。我慢できないほど痛むときだけ薬を飲むように言われていたから、恐らくそれが痛み止めなのだろう」
 アーノルドのほうから、キャスリンの手に触れてきた。そしてもっと頬をなでるようにと誘ってくる。
「おまえの指、思っていたよりも硬いな」
「殿下。そういうことは心の中で思っても口に出してはなりません」
「す、すまない」
 先ほどまでのアーノルドは、キャスリンを威嚇する番犬のようだったのに、今ではすっかりと懐いた小型犬に見える。
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