復讐は溺愛の始まり 〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜
 「仕事はどうだ?」

 「とても充実した毎日を送っています。東儀社長には感謝してもしきれません。本当にありがとうございました」

 逢莉によく似た綺麗な顔立ちの女性は深々と頭を下げた。逢莉はエネルギッシュなひまわりのような花のイメージがあるのに対して、妹の結愛はまるでカスミソウのような可憐で控えめな美しさがある。

 「どういたしまして」

 崇人が小さな笑みを返すと、彼女は誰もいないかを確認するかのようにキョロキョロと辺りを見回した。

 「あの……東儀社長は……その……汐梨さんのお兄さんですよね?あの大学のミスコンでお会いした……」

 「よく覚えてたな」

 逢莉でさえ覚えていなかった自分を覚えていた結愛に、驚きと感嘆の眼差しを向ける。すると彼女は少しはにかんだ顔になった。

 「私、一度会った人の顔は忘れないんです」
 「秘書としての大切なスキルの一つだな」

 彼女はありがとうございます、と再び笑顔を向けた。逢莉によく似ていて、思わず彼女を思い浮かべて頬が緩んでしまう。

 「あ、あの!姉をどうかよろしくお願いします!」

 突然、彼女は崇人にペコリと頭を下げた。

 「姉はああやってしっかりしてるように見えて、本当はすごく寂しがりやなんです。母が亡くなった時も、私の前では涙一つ流さないで気丈に振舞ってたけど、夜中に一人で泣いているのを何度も見たことがあって……」

 その話に、崇人は胸が締め付けられるのを感じる。今すぐにでも逢莉の元へ走って、もう大丈夫だと、これからは自分が側にいるから一人で悲しまなくてもいいんだと、この胸に抱きしめたくなる。これからは自分が彼女をずっと守ってやりたい。

 「そんな姉には包容力のある男性がいいな……って思ってます」

 「俺もそう思う。それじゃ。体に気をつけて」

 まっすぐと見つめてくる彼女に力強く頷くと、崇人は再び廊下を歩き出した。
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