復讐は溺愛の始まり 〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜
 (この子だけはなんとか守らなきゃ。この子だけはあの東儀家に絶対に取られたくない……)

 それから8ヶ月後、雲隠れした穂香はひっそりと小さな片田舎で無事に女の子を出産した。

 (なんて可愛いんだろう。雅義さんに目元がよく似てる)

 穂香は喜びで胸がいっぱいになりながら小さな命を腕に抱いた。崇人とは兄妹になる。でも二人は兄妹として一生一緒に過ごすことがない。そう考えると崇人を思い出して再び悲しみが込み上げてくる。その時──…

 「お母さん!」
 「た、崇人!?」

 崇人の声に思わず顔を上げた穂香は、涙目で駆け寄って来た息子を抱きしめた。

 「姉ちゃん、ごめん。東儀さんに見つかって……それで問い詰められて、ここを教えた」

 弟の泰生と一緒に部屋に入って来た雅義は、汐梨を目にした途端、くしゃりと顔を崩しながら小さな命を抱き上げた。

 「なんて可愛いいんだ。穂香、君によく似てる。ほら、崇人、妹だぞ」

 そう大喜びして汐梨を腕に抱いている雅義を見て、穂香は一気に青ざめた。この子まで取り上げられてしまったら穂香は生きていけない。


 「こ、この子はあなたの……東儀家の子供じゃありません!」

 「そんなわけない。君と最後に過ごした夜から計算しても辻褄が合う。それにほら、この福耳は俺と崇人と一緒だ」

 そう言って雅義は愛しそうに我が子の耳を指で撫でた。

 「穂香、どうか安心してくれ。この子まで君から取り上げようとしたりは絶対にしない。もちろん東儀家にも一切内緒だ。ただ……この子は俺の子供で崇人の妹でもある。この子の養育費を払わせてくれ」

 「養育費なんていりません。私が一人で育てます」

 そう頑なに首を振る穂香に、雅義は跪いて手を握りしめた。

 「頼む。俺にはこの子に会う権利がある。それに崇人から妹に会う権利を取り上げないでくれ。養育費を払う代わりに、こうして俺と崇人にこの子と週に何度か過ごす権利を与えてくれないか。君だってこうして崇人と一緒に過ごせる」

 そうして雅義は養育費の他に、汐梨の為にとなんと東儀家にはわからないように一軒家を用意した。そしてその家で週に何度か一緒に過ごすという、わけのわからない家族が始まった。

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