復讐は溺愛の始まり 〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜
 「橙子、どうするの?このままではあなたの評判はガタ落ちよ。仕事だってなくなるわ。過去にもこうやって芸能人が社会から抹殺されてるのを知らないわけじゃないでしょう」

 その言葉に穂香は小さく笑った。元々この女優の仕事は汐梨と残された弟を養うために始めたものだ。それにあの東儀家には大切な家族を傷つけられ、散々自分や泰生の生い立ちを馬鹿にされ、いつか絶対に見返してやるとそんな悔しさもあった。

 毎日テレビやドラマに出演する度に、自分は彼らが言うような価値のない人間じゃない、それを彼らの目の前でこうして証明してやると、そんな気持ちを胸にがむしゃらに働き続けた。まさかここまで成功するとは、正直思ってもいなかったが。

 「いいのよ。そもそも好きでこの芸能界に飛び込んだわけじゃない。だから辞めることに未練も何もないわ」

 自分はあの東儀家を追い出された時のなんの力もない弱い人間じゃない。この二十数年、もう十分に価値がある人間だと証明できた。それに今の穂香には雅義からもらった汐梨の養育費だって全て返せる額がある。

 「彼には明日会う予定になってるの。だからその時にお金も全て返して、私は全ての責任を取るという形で芸能界から引退する」

 そうすれば彼にも崇人にも迷惑をかけずにすむ。そして汐梨の存在だって東儀家に知られることもない。汐梨だけはなんとしてでもあの東儀家から守りたい。

 「もうこの業界は十分よ。実は近いうちに辞めようと思ってたの。私ももう人生の半分以上は折り返してしまった。残りの人生は静かに暮らしたいの。のんびりとした田舎にでも引っ越して、そこでひっそりと暮らすわ」

 そう言い残すと、穂香は事務所のオフィスを後にした。
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