復讐は溺愛の始まり 〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜
 それを聞いた途端、汐梨は突然飲んでいた水をゴフっと吐き出した。気管に水でも入ってしまったのか、ゴホゴホとむせている。

 「し、汐梨!? ちょっと、大丈夫!? ほら、おしぼり。それとハンカチも」

 私は慌ててテーブルの上にあったおしぼりとバッグから取り出したハンカチを彼女に手渡した。汐梨は咽せながらも何度か頷いた。

 「ゴホ、ゴホ………だ、大丈夫。………ちょっと驚いて」

 まぁ彼女が驚くのは無理もないのかもしれない。なにせ寝取ろうとしている相手があんな有名な大企業の御曹司なのだ。そんな無謀なことを考えるのはおそらく私ぐらいだろう。

 「そっか……結愛ちゃんは『ロバストビーンズ』に勤めてるんだ……なるほどね」

 汐梨は濡れた服を拭きながら、何かに納得したように頷いた。

 「そうなのよ。前に言わなかったっけ?」

 「……うん。そういえば、以前、コーヒー豆の輸入販売してる会社とかなんとか言ってたね。……でもさ、その……一応確認なんだけど……東儀崇人が恋人っていうのは本当なの?何かの間違いじゃないの……?」

 汐梨はハンカチでメガネを拭きながら、なぜか注意深く尋ねてくる。

 「結愛の話だと、穂月社長は毎日のように『もうすぐプロポーズされるのよ!』って会社で騒いでるらしいの。だから間違いじゃないと思う。それに実際に週に2回はデートって一緒に夕食をしたり出かけてるらしいし……。それにしてもほんと趣味悪よね。仕事もできて顔もいいのかもしれないけど、あんな女と結婚するなんて、目は腐ってるとしか言いようがないよね。汐梨もそう思わない!?」

 「う、うん……そうだね」

 汐梨はぎこちなく頷いた。

 「とりあえず話はよくわかった。で、本当にその東儀崇人を寝とるつもりなの?」

 「そ、それは……」

 思い切り言葉に詰まった。寝取ってやるなんて大それた事を言ったものの、どうやってその計画を実行すればいいのか見当もつかない。
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