復讐は溺愛の始まり 〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜
(……今日こそ来るのかな……)
無意識にコートの上からドレスのポケットに入っている小さな小瓶の存在を確かめた。
本当にこれからしようとしている事は正しい事なのだろうか……。
一瞬不安で決意が揺らぐものの、穂月社長の顔が脳裏に浮かんできてぎゅっと下唇を噛み締めた。決心を確かめるように小さく頷くと、暗い階段を降りた。
「いらっしゃいませ」
ドアを開けると、そこはとてもお洒落なオーセンティックバーになっている。ネットの写真で見た通り、全体的にシックなダークネイビーの色調の店で、照明も柔らかく落ち着いた雰囲気になっている。
奥にはカウンターがあって、バーテンダーが一人黙々と何か作っているのが見える。カウンターには8席、その後ろにはテーブル席があって合わせて計16席の小さな大人の隠れバーといった感じだろうか。
「お荷物とコートをお預かりします」
「ありがとうございます」
コートを脱ぐと、今日の為に特別に選んだ黒のキャミソールドレスが姿を表す。あまり露出しすぎないよう上品なデザインにはなっているが、体にフィットした膝丈のドレスはデコルテとウエストラインを綺麗に見せている。
ダークブラウンの長い髪は毛先をゆるくカールさせてあり、目元は大きな目が強調されるような少し派手めのメイクにしてある。
近くにいるテーブル席の男性がじろじろと見ているのを感じながら、私は素早く店内に視線を走らせた。すると、カウンターの隅の方に背の高い男がいるのが目に留まった。
(い、いた……!!)
ドキン──…と、心臓が信じられないほど大きな鼓動をたたいた。