復讐は溺愛の始まり 〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜
 「おい、大丈夫か?」

 突然大きな手が差し出され、驚いて顔をあげるとなんと東儀崇人が目の前に立っている。

 「えっ?あ、えっと……大丈夫です。ありがとうございます……」

 思わぬ展開に目を瞬きながらも、恐る恐る彼の手を取った。私の小さな手がすっぽりとその大きくてしっかりした手に包まれる。

 彼は手を引いてグイッと私を引き起こす。でも目が合った途端、なぜかひどく驚いたように目を見開いた。

 まるで珍しいものでも見るように呆然とその場に立ち尽くしたまま私を見ている。そんな彼を私も沈黙したまま見つめ返した。

 真正面から、しかもこんな至近距離で見る彼は本当に驚くほど綺麗な顔をしている。ただ……実際にこうして会ってみると、なぜか誰かに似ているような、どこかで会ったことのあるような不思議な既視感に襲われる。

 (どこかで、彼を見たことあったっけ……?)

 首を傾げながら記憶の中を探すが、いまいちピンポイントで思い出すことができない。

 もしかするとファッション雑誌かテレビか映画で見る俳優に似てるのかもしれない。こんな美男子なわけだし……。そう思うと、なんだかそんな気もしてきた。

 「お客様、大丈夫ですか?」

 声がした方を振り向くと、若い男性スタッフがタオルを差し出しながら立っている。カウンター越しにバーテンダーも私に「大丈夫ですか?」と言いながらナプキンを手渡してくれた。

 「すみません……お騒がせしてしまって……」

 せっかく美味しいカクテルを作ってもらったのに無駄にしてしまってなんだか悲しい気分になる。

 「本当にすみません……」
 「いえ、大丈夫ですよ」

 スタッフの男性はそう言ってくれるが、割れたガラスや床に広がったカクテルを掃除してくれるのを見ながら、いたたまれない気持ちでいっぱいになってしまった。
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