復讐は溺愛の始まり 〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜
 「言っとくけど、私のせいじゃないわよ」

 金髪の女性は小声で言い訳をしながら、さっさと私を置いて去って行く。そんな彼女に小さくため息をつきながらタオルで懸命に拭くものの、ドレスはびしょ濡れ。しかもアルコールの匂いがプンプンしていてどうしようもない。

 (はぁ……今日はもうダメだな……。とりあえず仕切り直しかな……)

 いろいろ諦めながら濡れタオルで懸命に拭いていると、突然大きなジャケットが私を包み込んだ。驚いて顔を上げると、東儀崇人が濡れてピタリと体に貼りついたドレスを、他の客から見えないようジャケットの前見頃を閉じてくれる。

 「そんな格好じゃ帰れないだろう。せめてその濡れた服だけでもなんとかさせてくれないか」

 「えっ、でも、これはあなたのせいじゃ──…」

 突然そんなことを言い出した彼に思わず狼狽えた。でも彼は私をチラリと見ると

 「マスター。悪いが、彼女のは俺につけといて。それから急いで彼女の荷物を持ってきてくれないか」

 そうテキパキと店のスタッフやマスターに指示した。店員が私の荷物を取りに慌てて店の奥へと消えていくのを見届けた彼は私を覗き込んだ。

 「タクシーを呼んでもいいんだが、歩いたほうが早い。すぐ近くなんだが歩けるか?」

 「は、はい。もちろんです」

 思わぬ展開に驚きながらも慌ててコクコクと頷いた。彼の大きな手が私の腰にそっと添えられて、その途端心臓がドキンドキンと信じられないほど大きな音を立てる。

 「じゃあ行こうか。おいで」
 「は、はい」

 そうエスコートされながら店を出ると、私は夜の街を彼と一緒に歩き出した。
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