復讐は溺愛の始まり 〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜
 リビングルームに戻ると、彼は誰かと仕事の話でもしていたのか、「ああ、わかってる。またな」と言いながらちょうど電話を切ったところだった。

 「あの……お風呂ありがとうございました……」

 そう声をかけると、彼はゆっくりと振り返って頭のてっぺんからつま先まで私をじっと見つめた。

 切れ長の鋭い視線がお風呂上がりのほてった素肌に突き刺さるように感じて、なぜか急に恥ずかしくなって慌てて顔を背けた。

 こんな見ず知らずの男性の部屋で2人きりなんて……。しかもバスローブの下は真っ裸だ。こんな大それたこと、復讐のことがなければ絶対にしない。

 「何か飲むか?」

 真っ赤になっている私に、彼は体の芯まで響くような低い声で尋ねてくる。その心地よい低音に心がざわめいて、再びドキドキとしてくる。なんとか自分を落ち着かせようと、ローブの前見頃をギュッとかき寄せた。

 「は、はい。できればコーヒー以外の何か温かいものを……」

 「わかった。ちょっと待ってろ」

 そう言うと、彼は飲みかけのウイスキーをコーヒーテーブルの上に置いて、キッチンへと歩いて行く。


 (い、今だ……!)


 私は飛び上がるように素早く動くと、急いでバッグから小瓶を取り出した。

 注意深く、でも素早く、彼のグラスの上に媚薬の入った小瓶を傾ける。でも焦っているからなのか、数滴じゃなくドバッと一気に10滴ぐらい入ってしまった。


 (はわわ……入れすぎちゃった……)

 青ざめながら、しばし媚薬の入った琥珀色のウイスキーを呆然と見つめた。

 「ハーブティーでもいいか?」

 キッチンから彼の声が聞こえてくる。ハッと我に返って慌てて顔をあげた。

 「は、はいっ!カフェインが入ってないものならなんでも大丈夫です!」

 ( ……特に副作用はないって汐梨言ってたから、大丈夫……だよね……?)

 私は大急いで瓶に蓋をすると、傍に置いてあるバッグにしまった。
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