復讐は溺愛の始まり 〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜
 「はい。どうぞ」

 彼はキッチンから湯気の立ったマグカップを持って戻ってきた。ドライフルーツか何か入っているのか、アップルとシナモンのいい香りがする。

 「ありがとうございます」

 彼からマグカップを受け取ると、早速ふーっと吹きながらひとくち飲んでみる。アップルのほんのりとした甘みと、カモミールのようなハーブの味もする。優しい香りと味でとても飲みやすい。

 彼は私の向かいに腰を下ろすと、ウイスキーの入ったグラスを手に取った。

 グラスに口をつけると、ひとくちゴクっと喉仏を鳴らせて飲む。でも眉根を寄せながらグラスに入っているウイスキーを見つめた。

 (も、もしかして……変な味がするのかな……)

 やはり入れすぎてしまったかと、私の心臓は彼に聞こえてしまうんじゃないかと思うほどバクバクと大きな鼓動をたたく。

 彼はすこし首を傾げるものの、グラスを傾けると、なんとグビっと一気にウイスキーを飲み干してしまった。


 (ぜ、ぜんぶ、飲んじゃったよ……)


 自分がしたこととはいえ、少し信じられない思いで彼を見つめた。かなりの量の媚薬を飲んでしまったが大丈夫だろうか……。

 そんな心配をしていると彼といきなりバチっと目があう。私は、ニコリと微笑むと輝くような笑顔を向けた。

 汐梨が媚薬を飲ませた後はひたすら可愛く微笑むといいと言っていたので、何度か鏡の前で練習してきた。だから上手く出来ているはず……。

 彼はそんな私の顔を吸い込まれるように見つめた。
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