復讐は溺愛の始まり 〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜
 「だ、大丈夫ですか!?病院に行ってお医者さんに見てもらったほうが──…」

 「これは医者では治せない痛みだと思う」

 彼は青ざめている私の手をいきなり取ると、彼の胸に押しつけた。ドクンドクンと大きく鼓動を叩く心臓を彼の厚い胸板の下に感じる。

 「こういうのってきっと切ないとか、愛しいとか、胸がいっぱいになるって言うんだろうな」

 彼はまるで初めて感じる感情に驚いているかのように目を伏せて笑った。
 
 「あ、あの……」

 顔を上げた彼の瞳が急にゾクっと肌が粟立つような熱を帯びていて、ハッと息を呑み込む。彼の大きな手がゆっくりと近づいてきて、まるで大切な宝物にでも触れるように、そっと私の頬に添えられる。

 「君は表情がクルクルと変わって可愛いな」
 「えっ……」

 身を乗り出してきた東儀崇人がゆっくりと顔を近づけてくる。彫りの深い端正な顔をまじまじと見つめた。

 「……キスしてもいい?」
 「えっ……キ、キス……?」
 「そう、キス」

 彼は指を私の長い髪にくるくると巻きつけながら、甘えるように耳の中に低く囁いた。吐息が肌にくすぐるように囁かれて、ゴクリと唾を飲み込んだ。

 (こ、これって……媚薬が効いてるってこと……?)

 胸の痛みはどうかわからないが、少なくとも心臓発作を起こしているわけではなさそうだ。

 彼のあまりにも色っぽい仕草に心臓をバクバクとさせながらも、ゆっくりと頷いた。あまりの楽しい会話で今まですっかり忘れていたが、私は今夜この為にここにいる。
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