復讐は溺愛の始まり 〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜
 「待ってよ!何か誤解しているようだけど、その子本当に使えないのよ。だから私が教育し直してるところなのよ!!」

 「俺が本当に何も知らないとでも思ってるのか。君の父親に頼まれて仕方なく君にビジネスのアドバイスをしていたが、これ以上関わるつもりはない。もちろんうちのグループ会社との取引も一切なしだ。社員一人も大切にできないような会社などどの道長続きしない。これからは自分でなんとかするんだな」

 そう言い捨てると彼はさっさと部屋を出て行く。すると背後から穂月社長が大きな声で叫んだ。

 「あ、あなたの家族の秘密を暴露するわよ!!」

 「お好きなようにどうぞ。俺も親父も全く気にもしていない。ただし、俺の大切にしている人達を傷つけるような事になれば、その時は容赦しない。よく覚えておくんだな。君の父親にもそう伝えてくれ」

 彼は肩越しに脅しとも取れる言葉を吐き捨てると、怒りで顔を真っ赤にしている穂月社長をその場に残してオフィスを後にした。



**


 「社長……あの……今日はありがとうございました」

 その日の夕方。全ての業務が終わり退社する前に社長室を訪れた私は、深々と頭を下げた。そんな私を見て、彼はカタカタとタイピングしていた手を止めた。
 
 「君に感謝されるようなことは何もしていないつもりだが」 

 「わかってます。それでも、彼女の代わりにお礼を言わせてください。あんな劣悪な職場環境からあの社員を助けていただきありがとうございました」

 私は頭を下げたままもう一度お礼を述べた。彼にとっては大したことじゃないのかもしれない。でも私も結愛も救われた。

 「どういたしまして」

 彼はそんな私を見て一言そう静かに告げる。私はぺこりともう一度頭を下げると、社長室を出た。

 自分ではどれだけ結愛を救いたくても……あの穂月社長にどれだけ復讐したくても、何もできなかったのに、彼はあの一瞬で全てをやってのけてくれた。彼にはどんなに感謝してもしきれない。

 「……結愛を助けてくれて、本当にありがとう……」

 私はドアに寄りかかると、手のひらで溢れた涙を拭った。
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