復讐は溺愛の始まり 〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜
 (なんで復讐なんてバカな事をしたんだろう。彼は何も悪くなかったのに……)

 結局東儀崇人は、穂月百合香が勝手に騒いでいただけで恋人でも何でもなかった。婚約する予定なんて全くの嘘だったし、彼は彼女とは似ても似つかない、なんの罪もない素晴らしい男性だった。

 そんな男性に媚薬なんて飲ませて復讐のために利用してしまったなんて、なんと謝罪していいのかもわからない。下手したら犯罪レベルだ。バレたら許してもらえないどころか、逆に訴えられてもおかしくない。

 それに加え……これ以上彼に惹かれてしまうのが怖いと思う自分がいる。

 東儀家は旧華族の血統である由緒ある名門の家だ。そんな彼には政財界のあらゆる名家から縁談話がひっきりなしにある。まさに私とは住む世界が違う天上人だ。

 そんな彼にいつか身分も何もかもふさわしい女性が現れて、2人が幸せそうにしている姿なんて見たらきっと一生立ち直れない。その前にここを去るべきなのだ。何もかも手遅れになってしまう前に……。

 (結愛もいい会社に就職して元気を取り戻したし、また海外へ行くような仕事をしてもいいかも……)

 ここは彼から離れて、頭も心も冷やした方がいいのかもしれない。

 「うん。明日、早速町田さんに相談してみよう」

 私はそう呟くと、お弁当箱をしまって秘書課へと戻った。




 「あ、橘花さーん。よかった。ここにいたんだ。探してたところだったの」

 その日の午後、資料室にこもって翻訳の作業にしばらく没頭していると、柚葉さんが一枚のメモを手にしながらやってきた。青い付箋で、そこにはここからあまり遠くない住所が記載されている。

 「社長が今から急いでここへ行くようにって」 
 「あ、はい。わかりました」

 (一体なんだろう……?翻訳に必要な資料かな……?)

 彼の綺麗な手書きのメモに疑問符を浮かべながらも、私はその場所まで急いだ。
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