復讐は溺愛の始まり 〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜
 「おはようございます……」

 月曜日の朝8時50分。

 私は重い足取りで東儀トレーディングの秘書課のドアを開けた。秘書課の人たちは東儀社長や重役が来る前に出勤して部屋の用意や秘書課でミーティングを行ったりするので、この時間はすでに皆デスクで仕事をしている。

 「あ、橘花さん、おはよう!東儀社長が出勤したらすぐ来るようにって言ってましたよ」

 デスクについた途端、柚葉さんは明るい声で私にそう告げた。

 「は、はい。ありがとうございます」


 (はぁ……きっとクビだよね……)

 私は再び重い足取りで今度は社長室へと向かった。

 通訳はその都度の仕事の内容にもよるが、場合によっては私のように常に重役の側について、会社の機密事項に触れたり、法律にも関わるような重要資料を扱ったりと会社の頭脳の中で働くことがある。もちろん重役のプライベートにも触れることだってある。その為、信頼関係は不可欠だ。

 媚薬なんて物を勝手に飲ませたことがバレてしまった今、さすがの彼だって私のような信用のおけない人間をこれ以上そばに置きたいとは思わないだろう。

 こうして私への報復が終わった今、君はクビだとか、媚薬を勝手に飲ませたことを訴えるとか、派遣会社に報告するとか、そんな事を言われるんじゃないかと週末はビクビクとしながら過ごした。

 (どうしよう、もし訴えられたら……お金払えるのかな……。結愛、本当にごめん……)

 緊張で冷えた手に汗をかきながら、コンコンと社長室のドアをノックした。
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