復讐は溺愛の始まり 〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜
 「 ジハイドロジェンモノオキサイド(DHMO)って科学者の間では結構有名なジョークなのよ。ちょっと難しい言葉を使うと、みんな危険物質だと誤解して恐怖を抱くっていう、そういう人間の心理をついた話なの。実はちょうどあの日、物質の名称の不明瞭さが人の心理に与える影響についてのセミナーがあって、そこで配られたあの小瓶をたまたま持ってたの」

 「う、うそ……。う、ううん、そ、そんなことない!絶対に何か他の物質が入ってる!!だって私ずっと東儀社長に惹かれたままなんだよ?」

 私はこの現実を全く受け入れられなくて、ひたすらブンブンと頭を振った。

 ただの水だったなんて……だったら二人で狂ったように抱き合ったあの夜は一体何だったんだろう……?全く説明がつかないというか納得がいかない。

 「逢莉。それは媚薬のせいじゃないんじゃないかな」

 「えっ……どういうこと?」

 「だから、東儀崇人に今でもずっと惹かれてるってことは、逢莉がすでに彼に恋してるってことなんじゃないかな」

 汐梨の落ち着いた声がやまびこのように耳の中にこだます。

 (……じゃ、じゃあ私があの夜彼に抱かれて乱れに乱れまくったのは、媚薬のせいじゃなくて、私が彼に恋してたからだってことなの……?)

 急に顔だけじゃなくて体もかぁーっと一気に湯気が出そうなほど火照ってくる。あまりにも痴女な自分が恥ずかしすぎる。

 (え……でも、でもちょっと待って)

 私は突然あることに気づいて顔を上げた。
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