復讐は溺愛の始まり 〜一途な御曹司は愛しい彼女を逃がさない〜
 「あれが単なる水だったのなら、どうして媚薬として東儀崇人に効くなんて言ったの?」

 「逢莉……本当に覚えてないの?」
 
 汐梨は私の言葉に驚いたような、少し呆れたような声をあげた。

 「大学の頃、一度だけだけど兄に会ったことがあるんだけど。覚えてない?逢莉がミスコンで優勝した時」

 「あ……に……?兄!?」

 汐梨がなんのことを話しているのか全くわからなくて、私はひたすら目を瞬いた。

 「そう。東儀崇人は私の実の兄なの。本当にわからなかった?確かに私は母似で兄は父に似てるけど、これでも結構似てるなんて言われるんだけどな」

 「え……ええっ!?う、うそっ!?」

 あまりの驚きで、帰宅するサラリーマンやOLがせわしなく行き交う人混みの中で思わずピタリと立ち止まってしまった。彼らが迷惑そうに私を見てるのに気づいて、慌てて歩道わきに寄りながら、大学のミスコンで優勝した時の記憶を必死に辿った。

 もう8年も前のことで記憶が定かではないが、そういえば、帽子を被ってもっさりとした頭をした黒縁眼鏡の男性が汐梨の隣にいたような気もする。

 でも正直な話、あの時は優勝した景品として貰えた高級メロン1ダースのことで頭がいっぱいであまり周りのことをよく覚えていない。

 それにしても、どうして今まで気づかなかったんだろう。苗字も違うし、一緒に並ぶかもしくは兄妹と言われない限りなかなか誰も気づかないとは思うが、言われてみれば少し日本人離れした綺麗な顔立ちや、長いまつ毛なんかは汐梨にそっくりだ。どうりで最初に会った時、どこかで会ったことがあるような既視感を感じたわけだ。

 「じゃ、じゃあ……」

 東儀崇人は、最初から私が誰か知ってたってことなの……?
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