私たちの恋風は、春を告げる
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私は、ずっと終わりの見えない暗闇を歩き続けていた。
自分が誰で、今どこにいるのかもわからない。
と、何かの匂いが花をくすぐる。
どこか懐かしい、花の匂いがした。
微かに頬に当たる風が、花の匂いをまとっている。
…ああ、そうだ。
この匂い……春の匂いだ。
……茉、………咲茉……
誰かの呼ぶ声がする。
この声、誰だっけ…
私、誰だっけ…
頭がぼんやりしてよく思い出せない。
重い意識を放り出して、また永遠に続く暗闇を歩き出そうとした時…
"咲茉"
また、私を呼ぶ声がした。