夢見る契約社員は御曹司の愛にスカウトされる
 香苗の言う通りだった。作ったパティシエはこれをとても気に入ってくれている。お茶の甘くない菓子は日本でもほとんど見当たらない。

「部内コンペでパティシエに口添えしてもらうといいかもしれない」

「香苗さんったら、自分のことはいいんですか?」

「んー、結構試作の段階で満足しちゃった。あとは販売するなら最終的にコストの問題もあるから、上が了承しないと動かないと聞いているし、まだまだ関門はある。でも、作りたいと思っていたものが試作で想像以上の出来だったので満足なの」

「いいなー。私、国内向けならこうしたいというのもあって、結構消化不良なんです。部長には言えないんですが……」

「問題は沙也加さんね」

「どういうものでくるんでしょうか?」

「実は私のパティシエが内緒で教えてくれたんだけど、エントリ―を取り消す可能性もあると思う」

「え?」

「担当のパティシエは彼女に私たちの考えているものがどういうものか教えろと脅されたんですって。彼女は上にコネがあるでしょう。それで頭に来たパティシエが、教えてもいいけどそうしたら出たくなくなるかもしれませんと言ってやったと教えてくれた」

「えー!」

「要するに、私達のほうが数段上だとパティシエが笑っていた。辞退もありうるわよ。あなたに負けたくないから無理やりエントリーするために帰国したんでしょう」

「香苗さん……」

「帰国したときの大騒ぎはあなたを敵対視してのことだったのね。よくわかったわ。周りを気にせず部長へボディタッチするし、いくら幼馴染でもオフィスであれはいただけないわよね」

「そうですね。驚きました。アメリカだと許されていたんでしょうね」

「まあ、彼女が上がるようならそれこそ贔屓よ。うちの会社も終わりってとこね」

「香苗さんったら……」

 二人で顔を見合わせて笑った。
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