もっと、キミと
☆☆☆
樹くんと別れてからの帰り道は、心臓がバクバクして足取りが重たい。
一歩ずつ、家に近付くのが恐怖でたまらない。
母にあんなことを言って、怒られるに決まってる。
樹くんといた時は、平気だったのに。
……一人になったら、こんなに臆病になっちゃうんだ。
そして、あと数歩で家に入るところまで帰ってきてしまった。
ーーやっぱり、今からでもどこかへ逃げてしまおう。
そんな最低なことを考え、くるりと振り返ると買い物袋を持った母が立っていた。
「おかえり、美華」
「た、ただいま……」
外だからだろうか、母はいつもと変わらない様子だった。
いつまでも中に入ろうとしない私に、母が先に玄関を開けた。
「美華」
「何?」
ゴソゴソと買い物袋を漁ると、手のひらサイズのカップを取り出し、パッケージを私の方に向けた。
「あんみつ、食べようか」
「……うん」
あんみつを食べるために、という名目で家に入った。
「お母さん準備しておくから、手を洗って来なさい」
「分かった」
靴を脱いで洗面所に向かい、手を洗ってからリビングへ向かった。